No.127 我が偏愛の「街路樹」
道みち [2005/09/24]
おもわず見上げてしまう日光や箱根の杉並木、いつか筑波の平野で見た悠々と立ち並ぶユリノキの長い列、横浜・日本大通りの海に続く古いいちょうの並木。「巨きな」という字がふさわしい街路樹はわたしたちの身近にも見つけることができますね。そんな並木たちの下に立つと、なぜかわたしの心はひと時解放され、いつのまにか深呼吸して、自分がこの樹たちのような大きなものに包まれている小さな存在であることを思い出すことができるのです。ちょうど満天の星の下に立ったとき、ワーッという開放感としんみりする内向きの気持ちとを味わうことに似ています。
そして幸せなことに、我が家のすぐ横にはケヤキ並木の坂があります。ちょうど今のような梅雨時は、霧のかかった映画のワンシーンそのものです。赤や黄色の傘が向こうのほうから出てきそうです。夜ともなると、濡れた幹や枝が黒いシルエットになり、恐ろしいグリム童話がいまにも始まりそうでドキドキワクワクしてしまいます。
暑い夏にはたっぷりの木陰と涼しいかぜをプレゼントしてくれます。人込みから戻ってこのケヤキ並木を見るとき、どんなにホッとすることでしょう。
11月中ごろになると、秋色の美しいグラデーションを空いっぱいに広げてみせてくれます。わたしたちは日本の伝統的なさまざまな色を楽しむことができます。それなのにある日ふと気が付くと、ケヤキの坂はカサカサいう落ち葉でいっぱいになっているのです。
冬の日はまた新しい感動の時があります。ふしぎに静かな朝、表のバス通りに出てみると、ケヤキの黒くぬれた枝に知らぬまに降り積もった白い雪がどこまでも続いていて、思わず声をあげてしまいます。クリスマスのころは沿道の家々の出窓や垣根に明かりが点き、異国の旅人の気分にさせてくれます。
おおきくて、涼しくて、たおやかで、やさしくて、その道が遠くのどこかにわたしを導いてくれるような、そんなガラにもないロマンチックな気分にさせてくれる、巨きな街路樹がわたしは好きです。
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