No.116 ニュージーランドと日本 その2
日本にあって、ニュージーランドにないものは何ですか、と聞かれたら、私は「原子力発電所」と答えます。この国の電力供給は地熱6%と17%の火力発電。あとは南島を中心とする水力発電が75%を占めています。「電気代が高い」「電気の供給量が足りない」といった不満を聞くことがありますが、ニュージーランド人は原子力発電に対して首を縦に振りません。原子力発電所を持たないことに十分意義を認めているのです。アメリカ合衆国の原潜がオークランドに入港することに反対し、フランスがムルロア環礁で強行した核実験には、オーストラリアと共に強い抗議の態度を表してきました。そのため、アメリカ合衆国との関係を損ないましたが、反核の旗頭として国際的に評価されました。
私が住んだロトルアには日本の製材会社の工場があります。日本はニュージーランドにとって、オーストラリア、アメリカ合衆国についで第三の貿易相手国(1999年度)で、材木は重要な輸出品です。そのためロトルアからタウポにかけては大森林地帯が広がっています。その工場で賃上げのストライキがありました。労働者がプラカードを掲げて道行く車や人々に訴えかけています。また今年(2002年)の2月にはクライストチャーチの病院で全看護士のストライキがありました。2週間近くわたるストライキの結果、ついに数%の賃上げを認めさせました。患者の多くは自宅に帰され、テレビは連日不満の声があがっていると放映しましたが、それほどひどい混乱もなくついに看護士たちは、要求を勝ち取りました。
ニュージーランドでは、中学校の先生たちや大学教授まで、ストをします。こうした社会現象の背景には低賃金があります。医者や看護士だけでなく多くの人々が高賃金を求めて、オーストラリアに移住しています。国内ではそのため医者不足看護士不足がおこり、緊急以外の手術は時には半年近く待たなければなりません。
こういう社会事情はあるものの、失業保険は本人に仕事が見つかるまで支給されます。1999年度の失業率は、マオリ17.9%、南太平洋からの移民13.9%、パケハ5.3%。年齢的には14歳〜24歳までの若年層の失業率が高く、平均7.21%でした。生活保護については統計資料に具体的な金額は提示されていませんでしたが、聞くところによると、一人、1ヶ月60ニュージーランド・ドル(3万円程度)が生活保護費として支給されているようです。ニュージーランドでは、給付金は退職時の給与とは連動しておらず、それだけでは十分ではないと言う人もいますが、なかにはそれを利用にして働かず朝から賭博場や酒場に入り浸りの人もいるそうです。
私立学校の教師で1時間15ドル(1997年度の最低賃金は7ドル)1ヶ月3600ドル(約18万円)。これを安いと見るかどうかは別として社会保障制度や労働条件は、日本とはかなり違います。
海に囲まれたニュージーランドで、しかも食料品は大体日本の3分の1ぐらいなのに、魚の値段が高いのはどこか納得がいかないのでホームステイ先の奥さんに聞いてみました。水揚げされた魚の多くは日本の漁港に運ばれ高い値段で取引されるそうです。そして日本向けの市場価格がそのままニュージーランド国内にも適用されるからだと説明をしてくれました。こんな話をしているときに、日本の漁船がニュージーランドの経済水域を犯して操業して摘発されたというニュースが飛び込んできました。ニュージーランドは貿易相手国である日本に大きな関心を寄せているようです。マスメディアを通して、日本がニュージーランドと深くつながっていることを実感しました。
「ニュージーランドと日本」という項目を立てたものの、たった一年半いただけでどこまでこの国のことがわかるのか、大いに疑問です。そのうえ、日本もニュージーランドも地域や家庭によっても違いがあるので、独りよがりな文章を書いているのではないかという不安があります。
しかし、ホームステイを通じて庶民の生活に直接触れることで、私は日本では考えもしなかった新しい視点で、ニュージーランドと世界を見ることができるようになったのではないかと思います。そして、言葉や文化の違いは簡単には乗り越えられないかもしれませんが、互いに助け合うという精神が大きな鍵を握っているように思えてなりません。
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