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コラム おしゃべりコーナー - バックナンバー  

No.102 私の異文化体験

江森悦子 [2004/03/19]

私は、東横線日吉駅から武蔵小杉駅で三田線に乗り換え、週に3日、神保町まで通勤している。三田線は武蔵小杉からが始発なので、私は8時26分発の三田線の座席を確保する為、早目に並んで電車を待つ。そこで、私は2列で並んでいる。ホームでは、3列に並ぶのが普通だが、前方2両目くらいのドアの前に並ぶ乗客はなぜか2列に並ぶ。もちろん2列に並ぶその足元には、くっきりと3列の線が引いてある。にもかかわらず、誰が決めた訳でもなく、それが、当然であるかのごとく我々は2列に並ぶ。2列乗車、それは、毎朝、同じ時刻の同じ通勤客達の、無言の小さなルールである。

ある朝、2列に並ぶ私の横に割り込むようにして、3列にして並んだ乗客がいた。割り込みされたように感じた私は「なんて常識知らずな人間?!」と、朝の不機嫌も手伝って憤慨し、とびっきりの冷たい視線をその乗客に投げかけた。そのうち、彼は3列に並んだ自分の後ろに列がなさないことに気が付き始め、周りの乗客から発せられる無言の圧力を感じ取り、電車が来るまでの不安な数分間を耐え忍んでいた。それから数日後、私は寝坊で乗車位置を変えたことがきっかけで、後ろの方で車両を待つ乗客は、ホームに書かれてある通り、きちんと3列で並んでいることを知った。

2両目と3両目のドアの間に、階段の降り口があり、それを取り囲むようにして壁がある。壁がある為、3両目からは、ホームの幅が狭くなっており、3列に並ばざるをえない状況になっている。壁の影響がないホームの前方だけが2列乗車だったのである。
文化が無意識に行われる社会の規範であるなら、階段の障壁を境に、ホーム前方に並ぶ乗客は、2列乗車という独自の文化圏を作り出していた。関西と関東では、エスカレーターの立ち位置が逆である。同じように、無意識に刻み込まれた、限られた場所だけで有効なルールが存在する。こんな百数十メートル程の朝のホームにさえ、私はささやかな異文化を感じた。

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