No.100 備前焼と私
焼き物に興味を持ち始めたのは、15年くらい前からだと思う。以前住んでいた岡山倉敷に多くの窯があり、焼き物に出会う機会が多かったからだ。日常使う食器から、美術工芸品まで、数多くの作品を目にするたびに、素朴な美しさ、手作りのあたたかさにひかれていった。
岡山伊部には一千年の間つくり継がれてきた「備前焼」がある。うわぐすりをかけないで陶土を焼く焼き方が、その特徴だ。作家の経験や長年の勘、培われた技術によってその作風が変わってくる。約2週間窯の中で赤松の割り木を焚き続け、窯に置く位置、窯の中の温度、灰のかぶり方、灰の溶け方、などによって自然につくられる素朴で微妙な色合いがたまらない。
岡山に住んでいた頃は、毎年行われる備前焼まつりに行くのが私たち夫婦の楽しみだった。
小さな町がその日ばかりは人と車にあふれ、町をあげてのお祭りとなる。インターからの一本道は長い列を作り、地元の小、中学校の校庭、空き地が臨時の駐車場となって私達を迎えてくれる。駅周辺には無数のテントが立ち並び、普段より安く買えるとあってけっこう遠方よりファンがかけつける。定価もあってないようなもので、交渉次第で安くなることもある。また○○作という作家の名前だけで、とても高価なものもある。いいな〜と思ってもそう簡単に手に入るような値段ではない。初めの頃はあまりの数の多さにわけがわからなかったが、毎年いろいろな作品を見て気に入った器を少しずつ買い求めているうちに好きな作風ができてくる。私たちの好きなものは「桟切(さんぎ)り」と呼ばれるもので、暗灰色、青色、を帯びたものや赤紫蘇色の中に炎の色を持った器たちだ。その作風を持つ作家のテントを真っ先に訪れ、彼のいろいろな作品を見るのはワクワクする。私達が買えるものはそんなに高価ではないが、気に入った備前焼のビアグラスで飲むビールは、泡が少なくてとてもおいしい。
今ちょっとうれしいのは、私達が以前から目をつけていた若手作家がいろいろ賞をとり価格が年々上がってきていることだ。私達って見る目あるかも・・とか彼が将来有名になって我が家にある彼の初期作品がお宝になる日がくるかも・・と備前焼をながめて楽しんでいる。

|