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コラム おしゃべりコーナー - バックナンバー  

No.80 ほんとうの温泉

駒子 [2003/01/23]

 Mさんからハガキが来た。
「行きました!富士山はすこうし見えました。ラベンダーのにおい、それはいちばん好きな湯ぶね。でも、ほんとうの温泉じゃなかった。〜後略〜(原文のまま)」

 Mさんは、来日2年弱のまだ若いアメリカ人女性。謙虚でおっとりしている。話し方ももの静かで優しい。若い人と話すよりお年寄りと話すほうが好きだという。
日本の文化や歴史や自然が大好き。だから都会よりも田舎が好き。
英語教師をしながら、お休みには、リュックを背負っていろいろなところへひとりで出かけて行く。長い休みには九州や東北へ。普段の休みには日帰りで軽登山。 彼女が山へ行く時には、自分でにぎったおにぎりと一緒に、リュックの中にタオルや着替えを入れる。帰りに温泉に浸かるためだーー「温泉だあいすき! 露天風呂,サイコー!」

 先日「アメリカから友達が来ます。山に登って、富士山を見て、温泉に入りたい、と言っている。どこか教えてください」と頼まれたので、その条件を満たすような立ち寄り湯を調べて知らせてやった。(かなりの難問ではあったが)その返事が冒頭のハガキなのだ。

 最近は、各地にたくさんの立ち寄り湯がある。公共のものも多く、小ぎれいな建物、それなりのサービスで若者からお年寄りまで 大人気だという。ドライブがてら気軽に立ち寄って一風呂浴びてさっぱりできるとあれば、温泉好き日本人にとってはお手軽なレクリエーションなのだろう。でも、そのほとんどが循環湯だという。見た目はきれいでも、自然に湧き出たものではなく同じ湯を循環器で洗浄しているものが多いのだそうだ。かなり遠い源泉から引いてきて、沸かしなおしているものも多いとか。

Mさんは「ほんとうの温泉」にこだわる。彼女の言う「ほんとうの温泉」とは、自然の中にある、湧き出たままの源泉に浸かることを意味するらしい。だから、たいていは かなり山奥だったり、都会を遠く離れた海辺であったり、とにかくひなびた湯の宿が多いらしい。「ほんとうの温泉は、建物はあんまりきれいじゃない。でもお湯は最高! 外にあるだけじゃ露天風呂と言えないでしょ」と首をすくめる。

うーん、そう言われてみると、私が今までに行った温泉のうち「ほんとうの温泉」はいくつあっただろう? 露天風呂が人気だから、とにかく庭先や狭い敷地内に湯船を作ってお湯を入れて、ハイ露天風呂のできあがり! 今の日本‘自然のまま’ではなく‘自然に似せる’こと‘自然を作り変える’ことが当たり前になってしまっているのかもしれない。

そのうち、Mさんの案内で「ほんとうの温泉」に連れて行ってもらおうと考えている。

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