No.73 ナースのお仕事〜Part4
今日は、まだ若い患者さんのお話を…。 バイクの事故でもう2ヶ月以上も入院している21歳の男の子の事を。
開放性骨折といって、折れた骨が皮膚を突き破って外に出てしまった状態で、 ばい菌が入るといけないのでまず、洗浄をして入院になりました。 それから感染の兆候がないことを確認して、2週間くらい経ってから骨折の整復 手術。 そしてすねの骨折だったので皮膚が薄く、また開放性の骨折だったこともあり、 皮膚のくっつきも悪く、結局形成外科的に皮膚移植の手術となったのです。 それまででもうすでに2ヶ月近く入院していて、皮膚移植をすると血流を保た なければならず、ベッド上の拘束生活が1週間。
もともと、口数が少なく、他の患者さんともあまり話さない、なんとなーく暗い感 だったんですが、長期入院に重ね、ベッドの上で一日中過ごさなければならないと言う苦痛がかなりストレスになっていました。でも状況では外出して気分転換を図るなんてことは不可能で、もうやることも何にもないと言っていました。 ストレスが大きすぎるので、一日2回まで、30分から1時間の車椅子乗車は許可が出ましたが、病棟内だけという制限付き。
それでも、ベッドから離れられるし、先日の準夜勤務のときに消灯になる前に乗ってみようと話して乗りました。 でも、せっかく乗れたのに10分で戻ると言い出し、どうだった?と聞いたら、「ムナシカッタ」と。そっか…というほか言葉が見つかりませんでした。
そのあと23時くらいにまた車椅子に乗りたいというので乗ってもらったら、 外の空気が吸えるところはないですか?と。 看護婦が二人しかいない状況では外に連れて行ってあげることもできないし、 うぅーんと考えた末、病棟の一角にあるベランダに行きました。 無口な彼が「ここは良い。気持ちい。」と。 わずか5分か10分の時間、いろいろ話し、そろそろ戻ろうかというと、一人で 戻れるから大丈夫というのです。 でも、ここは5階だし、万が一飛び降りたりなんてこと…と考えると、それはできない。それはダメ…と言いました。 そのときの彼の表情は本当に辛かった。無口な分、心に溜め込んでいたんだなと思いました。
ちょっと環境を変えた方がいいかなと思い部屋を変えようか?と聞くと、窓際に行きたいといいました。誰だって窓際の方がいいのです。でも、一人だけ変える事は平等性にかけるので難しいのですが、状況が状況だけに、相談するねと言って戻りました。
彼はそのまま、しばらく車椅子に乗っていて、どこに行くわけでもなくぼんやりしている。そのそばを通るのは、何だか気まずかったけれど、そっとしておこうと思い、普通に仕事をしていました。でも、そばを何度か通るときに「ありがとうございました」と言ってくれました。 辛い状況で他の人にありがとうなんていえるのはすごいなあと感心しました。
翌日出勤すると、かなり発散できたからベッドを移動しなくても良いというのです。 でも、まだこの先退院の予定はたっていないし、せっかくだからとベッドを窓際に変えました。すると、窓から落ちるのではないかと、ちょっとドキッとするくらい 身を乗り出して、風が気持ちいと歓んでくれました。 決して景色が良い訳でもないのに、星は見えるかな…とか話していて、 あいにく雲がかかっていて見えなかったので、紙に星を書いて切り取ってあげた ら、「一番星かなぁ…」って。 工作の苦手なあたしの星はとっても歪んでいて、三番星…と言っておき ました。
オペをしてしまえば結構動き回れる周りの患者さんの中で、自分だけ何の変化もなく、逆に動けない状況になってしまったということは、本当に辛いことだと思います。
訴えの多い人は、それなりに自分の意見を言えてるからまだいいのです。 あまり自分の欲求を表に出さない人ほど、その状況に満足しているのではなく、 中に溜め込んでしまうのではないかと思いました。 早く良くなって、元気に退院できる日が来るといいと思っています。

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