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コラム おしゃべりコーナー - バックナンバー  

No.71 Y子&E子の“モンゴル”旅日誌〜その2

Y子&E子 [2002/10/02]

8月21日(3日目)

<国境>
さて、国境である。 四方を海に囲まれている日本人にとって、‘国境’についての意識は希薄である。地続きであるのに、見えないラインを一歩踏み出したら他国である、ということがどういうことなのか・・・どうも、実感が湧かない。わが国では、間近に国境を見る機会はないのだから。

 一晩中、大草原を走り続けた列車は、早朝にザミンウデ駅に到着。待っていた車で国境に向かう。運転手は、陽に焼けた顔に深いしわが刻まれた中年の男性。途中3ヶ所の検閲所(?)を通 過するが、そのたびにこのおじさんは係官と何やら交渉して、うまく通過。どこも、軍服に身をかためた国境警備隊が警備していて、けっこう厳しいムードだ。最後の検問所からは、若い兵士が我々の車に乗り込んで、同行する。

「ここです」と降ろされた場所は、広い平原にポツンと建っている石碑の前。その脇に申し訳程度に、2メートルばかり鎖が張ってある。やや離れたところに線路が走っているが、この鉄道線路はまっすぐ中国領へとつながっている。1956年に中国との国際線が建設され、その時にこの石碑が建てられたそうで、モンゴル文字が刻まれている。「裏側に中国と書いてあります」と言われ、物見高い我々はそれを確かめようと石碑から身を乗り出した瞬間「×△+*×▼*!」と、兵士の叱責の声。

なるほど兵士はダテに付いてきているのではない。監視のためなのだ。しかし、広がる大地に目に見える国境線があるわけもなく、誰がいつどうやって定めるのか・・・・思えば、中国とモンゴルはいわば宿敵同士。はるか太古の昔からこの国境線をめぐって争い続けてきたのだ。 かの万里の長城も、草原の遊牧民(モンゴル騎馬軍団を含む)からの襲撃を防ぐために築かれたものである。けれども、モンゴル人からすると、浸食してきたのは農耕民族の中国人だという意識があるらしい。だから未だに、モンゴル人は心底、中国人が嫌いなのだという。

去り際に、お茶目なY子が、石碑の脇からちょこんと足先を中国領側に突き出した。「ウオーツ!」と、兵士の叫び声。ハルちゃんが慌てて飛んでくる。「ダメですよ!逮捕されますよ」 と真剣な顔。「なによ。つま先ちょっと出したぐらいで・・・」「はっは、逮捕されてみるのもおもしろいかも・・スパイ容疑ってことかなあ」などと、全然動じない我々は、やはり‘平和ボケ’なのか。 逮捕を免れて、国境を後にした我々には、その後、過酷な試練が待っていた。

<ゴビ>
「ゴビ砂漠」とか「ゴビ草原」とか言われているので、普通「ゴビ」は地名かと思われているが、モンゴル語で「ゴビ」は、草の生えにくい砂地という意味で、サハラ砂漠のようにまったくの砂丘ではなく、青々と草の生えた草原でもないーー遠くから見ると茶褐色の大地に見えるがよく見るとまばらに草が生えているという地を言うらしい。その草も、我々が普通 ‘草’と言った時に想像する、草緑色の葉ではない。緑がかった銀灰色とでも言おうか、白茶けた緑色で、丈は7,8センチ、棒のような茎に針金のように細い葉がついている。

よく目をこらすと薄紫色の小さな花をつけている。その花が風に細かくふるえている様は可憐でもあるのだがこの草が羊たちの大好物なのだという。我々からみると、水気が乏しくおいしくなさそう・・。日本の青々とみずみずしい葉っぱを食べさせてやりたくなるのだが、そんなものを食べたら羊たちは病気になってしまうのだそうだ。 我々はそのゴビ草原を突っ切って、ツーリストキャンプのあるツァガンハドというところまで行く予定なのだが、ガイドブックには、「車で大草原を堪能してください」と1行書いてあるだけ。大地は砂地ではあるけれど、表面 は非常に固いのだ。しかも、けっこう起伏が激しい。

道なんてあるんだかないんだか・・・そこを、人生の酸いも甘いもかみ分けたといった雰囲気の運転手のおじさんが、飛ばす飛ばすーーー大草原の道なき道を、車で疾走しているという図柄ではある。しかし、アメリカのハイウエイを猛スピードでかっ飛ばしている光景を思い浮かべてもらっては困るのである。中でははらわたもひっくり返るようなバウンドの嵐。揺れるなんてもんじゃないのだ。

窓外はどこまでも続くはてしなき平原。同じ風景、単調な時間が永遠に続くようだ。 ゴムまりのように弾み、フライパンではじけるゴマのように跳びはねながら思う。「誰がこんなコース選んだんだ!」

<ラクダに乗る>
途中、遊牧民一家の住むゲルを訪問してミルクテイーを振舞ってもらったりしたが、およそ6時間、ひたすら揺られ続けて、なだらかな丘陵の懐にぽつりと建っているゲルの白い姿を見た時には、もう疲れ果 てていた。お昼を食べてゲルのベッドに身を投げ出す。 ハルちゃんが、「少し休んだら、ラクダに乗りましょう」

休んでいる間にスコールがあり、そのスコールが過ぎ去った後のさわやかな風に誘われ、ゲルを出ると、ラクダが三頭、のんびりと草を食んでいた。ラクダも雨に洗われたせいかこざっぱりした顔で、大きな目とそれを覆おう長―いまつ毛がかわいい。

約1時間、草原を吹き渡るさわやかな風と、ゆったりと歩くラクダに身を任せて、二人とも途中何度も「気持いいー」と声を上げる。朝から何時間も続いた過酷な試練も、みーんな帳消し。ほんとに「楽しかったあ〜」

―  続く  ―

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