第116回 うれしい発見
角川
日本語教師という仕事をしていると、予想外のことを発見することが多いものです。それは私の無知からくるものもあれば、国や文化による違いもあります。そんな新しい発見は驚きとともに私の好奇心をくすぐり、ふだん持ち歩いているノートの表紙の裏に書き留められることになります。今回は、そんなネタ帳の中からいくつかをご紹介したいと思います。
1)「アリとキリギリス」:ミャンマー
読解のクラスで星新一のショート・ショートの中から「アリとキリギリス」を読解したときの話です。本文に入る前に、タイトルを見て自分が知っているストーリーを日本語で語ってもらいました。誰もが知っている働き者のアリと怠け者のキリギリスの話です。夏の間に遊びまくっていたキリギリスが冬になると食べるものがなくなり困ってしまうというストーリーですが、四季のない国だと、これはどのような話になると思いますか。
クラスには大勢の韓国人の中にたった一人のミャンマー人がいたのですが、ミャンマーの「アリとキリギリス」の話を聞いて、私も韓国の学習者も改めてミャンマーの地理を知ったのでした。ストーリーは同じですが、ミャンマーには四季はないので、夏と冬ではなく「雨季」と「乾季」で表現されていました。恵みの雨をもたらす雨季と、作物がとれない乾季というところでしょうか。
余談になりますが、同じく星新一の「おカバさま」を読解する前にタイトルから想像できることを話してもらったら、ミャンマーの彼女は「カバは空芯菜が好き」と語ってくれました。私にとってカバは動物園でしか見たことがない非日常的な動物ですが、彼女にとってカバはもっともっと身近な動物なんだな、と思ったのでした。
2)「石頭」「八方美人」「顔が広い」:韓国
お隣の国である韓国は、日本と似ていることが多い国のひとつですが、表記が同じだから意味も同じだろうという先入観を持って話していると、話が食い違ってしまうことがあります。
その一つが「石頭」という言葉。日本では頑固で融通のきかない人のことを表わしますが、韓国では頭が悪いという意味だとか。例えば、テストの点数が悪かった子どもに「あなたは石頭なの?」などと使うそうです。マイナスの意味は同じだけど、意味がぜんぜん違いますよね。他にも、「八方美人」という言葉は、韓国では完璧な女性に対して使う最大の褒め言葉だそうです。顔も頭もスタイルも性格も、何もかも全部そろって秀でている人に対して使うのだとか。日本だと悪口を言われた気分になるのに…
では、日本では「顔が広い」という意味の言葉を韓国語で言うと何でしょうか。答は「足が広い」と言うのだそうです。同じ体の部位でも場所が違うんですね。人脈は足でつかむものか、顔を売っているものか、というところでしょうか。もし間違って褒め言葉のつもりで「あなたは顔が広いですねえ」と韓国の人に言ったら、どうなるでしょう。相手が顔の大きい人ならケンカになってしまうかもしれません。文字通り「小顔」の反対の意味ですから。私の知っている韓国人の女性は、このことで本当に夫婦喧嘩をしたそうです。
ところで、これらの言葉は中国から来ているものでしょうか。そうであるならば、中国ではどのような意味なのでしょうか。伝来する途中で意味が変わってしまったのかもしれません。知っている方、教えてください。
以上、私の好奇心をくすぐったものの中から、いくつかをご紹介しました。本当はもっと興味深いものもあるのですが、下品なものや侮辱ととられかねないものは控えさせていただきました。興味のある方は個別にご連絡ください。
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