第114回 声に出すときは
梨
幼い時「そののさ、ゆぅりなぁでしこぉかきねのちぐさー」と、調子よく歌っていたが、実は、「園の小百合、撫子、垣根の千草〜」であるとわかったのは、大分後になってのことである。また、何かと、とりざたされる「君が代」を式典の前に練習するのだが、きまって「きみがぁよぉわー ちよにぃにやちよに さざれ、/いしの いわおとなぁりて〜」
「君が代は 千代に八千代に さざれ石(小石)の巌となりて〜」だから、「さざれ」で息をつがずに「さざれーいしの」と続けて歌うようにと、指導の教師が毎回注意するが、毎年同じことの繰り返しである。これも、何の意味も考えずに歌っている証拠だろう。もちろん、ことばを旋律にのせる場合の問題もあると思うが。
親戚の小学校3年の男の子、最近、学校でも音読を奨励するらしく、毎日、一冊音読をしては、記録表に記入している様子。ある時、
「それに さっきから ひとっこ/ひとり とおりません」聞いていて、「おやっ」と思った。「ひとっこひとり とおりません」ではないか。
「みたこともないそら/いっぱいの それはみごとな/おほしさまでした」これも
「みたこともない そらいっぱいの それは みごとなおほしさまでした」だろう。
(2例とも「ひ・み・つ」たばた せいいちさく)
特に、子供が音読をしている時は、よく注意して聞くべきだと思った。
これに類したことが、テレビ、ラジオでもある。いわゆるそのみちでは、プロフェッショナルであるはずの人達が、同じようなミスをしている。気にしなければ、そのまま聞き流してしまうだろうが。特にアナウンサーは、ニュースなどで、とっさに渡された原稿を読む場面がしばしばあると思う。くれぐれも、注意してもらいたいものだ。
「〜のおかげで」「〜のせいで」の使い分け
数か月前になるだろうか、日本語能力模擬試験の作問に携わった折、メールでの議論が伯仲した。それは、2級の文法問題「発見が早かった 我(わ)が子の命は助かった。」という問題で、 部に正答としては、「おかげで」を入れるのであるが、「せいで」は、是か否かで、大論争となったのである。結局、対象は2級を受験する外国人であること。
「おかげで」は、「〜の助けがあったので、よい結果になった」と感謝の気持ちで言う時。
「せいで」は、「〜の原因で、悪い結果となった」と言いたい時の言い方。
レッスンで教えている原則に従おうということで、落着した。
不思議なもので、何度か口に出して言ってみると「発見が早かったせいで我が子の命は助かった」も言えそうな気がしてくるのである。
先日、テレビでこの問題を取り上げていた。
雨が降ったおかげで水不足が解消した。「御陰」神仏の助け、恩恵
雨が降ったせいで水浸しになった。「所為(せい)」そい、しょいが、せいに変化したもの。多くはよくないことに使う。ただし、「君のおかげで上司から大目玉をくらった。」と、逆説的に使うこともあるが、「せいで」は逆説的には使わない。
以上、ごく常識的な解説であったが、日々言葉が変化している現在、例えば「やばい」が「すごい、すばらしい」という意味に使われているように、いずれ「せいで」も「おかげで」と同じ意味に使われるようになるかもしれない。
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