第111回 漢字語彙のパターンを考える
漢字道
中級レベルを勉強する学習者にとって避けて通ることができない漢字熟語。いろんな学習者と接しながら、彼らがどのようにこの坂道を登っていくのか、またどのようなサポートが有効なのかを考えながら日々を過ごしている。効率が悪いのではと思う学習者は漢字熟語をひとつずつ丸暗記しているタイプではないだろうか?受験英語の単語丸暗記と同じである。試験が終わったら、忘れてしまい、応用がからきしできない。勉強が苦しくなるだけで気の毒になる。ただ、面白おかしいだけでもこの坂は登れない。毎日毎回、彼らと自分に問いかけている課題でもある。
文法学者でもないので、全て正しい説明ができるわけではないが、できるだけシンプルに分類して提示することを心がけている。漢字の応用力を育てたいと思うから……。教える側も生徒と同じようにこの坂で悪戦苦闘するしかない。
ある程度の漢字を覚えた学習者にとって、音読みと訓読みを文章の中で読み分けることがまず、第一番の関門だ。一生懸命覚えてきた筈の漢字なのに、中級に入って、自信をなくし、手がかりすらつかめず、漢字の海で溺れている学習者も多い。そんな訳で、例文を頭をひねって考える。
その会合には白人や黒人など様々な人種の人が
二百人ほど参加していた。
例文があまり自然じゃないことや人種差別云々はお許しをいただいて、4級レベルのこの簡単な漢字が容易ではないことをまず、わかってもらうことが目的の一つ、それから読み方の基礎パターンを覚えてもらう事が一つ。
・漢字+漢字 … だいたい音読み
白人、黒人、人種
二百人、数人、何人、役人、
ジンとニンの読みわけの意味も説明が必要かも…。
アメリカ人は「カタカナ+漢字」でしょう?とチャチャが入ることも…、ムムム。
・漢字一つ … だいたい訓読み 人
この辺を少しずつわかってもらいながら、動詞のパターンにも進む。
店を開ける … 開店 店を閉める … 閉店
・漢字+漢字 … だいたい音読み 開店、閉店
・漢字+ひらがな … だいたい訓読み 開ける、閉める
・目的語(名詞)+動詞のパターンを覚えてもらう。元は中国語なんだから…。
登山…山に登る 帰国…国へ帰る
もう一つのパターン
・動詞 + 主語(名詞)
有罪…罪が有る 無罪…罪が無い
有名…名が有る 失望…望みを失う
「開」の字を取り上げたので、ついでに「開始する」「開通する」のパターンに。
・漢字+漢字 & 動詞+動詞のパターン
開けて始める 開けて通す
解決する 決断する 見学する
売買する 反対する
もう少し余裕のある学習者なら、同じ音の漢字で、違うよく知っている言葉で 意味の違う漢字「理解する」なども「理を解する」と本来の意味を分解して提示してあげると嬉しそうな顔をする。「ふーん」とか「ああ」とか「なるほど」の顔をする。丸暗記の虚しさ、苦しさから、解放されて、少し漢字への手がかりを感じてもらえるように思う。
先を急ぐと失敗するが、もう少し入りそうなら、「解放」「開放」の同音異義語まで、ちょっと回り道もいいかもしれない。漢字への理解が深まるように思う。
ちなみに同音異義語は漢字学習がはかばかしく進まず、ちょっと落ち込みそうな時など気分転換になって明るい気持ちになったり、やる気がでるように思う。よく知っている簡単な漢字の組み合わせで語彙が一気に増える感じがするようだ。丸暗記では漢字の応用力がつかないことと漢字を組み合わせて作る言葉のおもしろさを再確認したり、認識してもらえるように思う。「ふ〜ん、なるほど」という学習者の顔が私の栄養剤になる。
以外・意外 名詞・名刺 加熱する・過熱する
電気・電機・電器 開ける・空ける・明ける
変わる・代わる 直す・治す 回答・解答
温かい・暖かい 謝る・誤る 高温・高音
一字違いで微妙に意味が変わる熟語も教えていて面白く感じる。
延長・延期 冷凍・冷蔵 重要・必要 製作・制作 差別・区別
製品・商品 上級・高級 駐車・停車 経験・体験 知能・技能
分離・分解・分類・分析 などなど
漢字版ミニマム練習は漢字への興味や理解応用に役に立つのではないかと思う。
話がそれたようですが、教える時にこれはどのパターンかななどと考えてみる。
・名詞+名詞 … 客席 客間 父母 夫婦 夫妻
・形容詞+名詞 … 高級な 悲劇 低音 弱点
・形容詞+形容詞 … 苦痛 強固な 危険な 冷静な
・形容詞+動詞 … 強引な 強行 急行 急変する
・動詞+名詞 … 教室 座席 来客 貸家 食品
・副詞+動詞 … 未来 必要
これ以外にも案外手こずるのが、漢字熟語の省略パターンであろうか。
例えば、「都心」…都会の中心など…省略された経過を丁寧に見せてあげるのがいいように思う。
語彙の説明の時は単純に意味だけではなく漢字の構成などを意識させることが回り道に見えても漢字の応用力がつくものと思う。皆様もこんなパターンがとか、これは違うんじゃないのとか思われるところがあれば、是非教えて下さい。
取り合えず基礎パターンを示したものの、早番、学習者には謝らなければいけなくなる。 漢字+漢字のパターンで訓読みがたくさんあることも白状しなければならない。
大雨・気軽・手軽・出口・入口・家出・荷物・夜中・昼間・居間 などなど
熟字訓もあるし…。 眼鏡、白髪、浴衣、上手、下手、田舎 などなど
学習者の「先生のうそつき」とか、「うんざり」とばかりの非難の目を見て「ごめんね。だましたわけではないんだけど」と心では思いつつ、「これは覚えなさい。試験受けるんでしょう」と言うしかない私である。ムムム。
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