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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第110回 「約物」

chaan

 学習者も上級者になるにつれて、日本語のいろいろな文を読む機会が多くなってくる。先日もある学習者から、論文中の図解説明に出て来た「A’」の読み方について質問があった。「エーダッシュ」と答えると「では、A”は?」。えーと、ダッシュが2つだからツーダッシュ?いやダブルダッシュ?それとも2ダッシュだったかも・・・。辞典で確認しようにも「’」だけしか出てこない。家でゆっくり調べることにした。
 現代用語を調べる時、私はパソコン上の百科辞典『Wikipedia』をよく使う。
大体のことはそこで解決するが、「”」は手強く、あちこちリンクしながらやっと「ツーダッシュ」のお墨付きを得た。ちなみに、「ダッシュ」というとまず「―」が出てくる。世界的にはこちらが主流で、欧米では何十年も前から「’」は「プライム」に変わったらしい。日本では、まだ学校でもほとんどダッシュを使っていると思うが。
 ところで、記号についていろいろ調べていた時に目についたのが「約物」(やくもの)という言葉。前述の『ウィキペディア』によれば、「約物とは自然言語の記述で使われる、括弧や句読点などの特殊な記号のこと。元は印刷用語で、〈しめくくるもの〉の意。(中略)最近では文字しか使えないEメールや電子掲示板などで使われるアスキーアートで約物を使うこともあるが、これには約物としての意味はない。」昨年爆発的ヒットとなった「恋のマイアヒ」のノマネコなどまさに約物出身だ。
 日本語の約物リストを見ていると、括弧や鉤括弧などお馴染みのものもたくさんあるが、「墨付きパーレン【】」だの「中黒・」などは言葉の響きがプロっぽくていい。
 踊り字、重ね字、送り字、繰り返し符号(々ヽヾゝゞなど)ももちろん約物だ。日本語学習者にとっても、これらの不思議な漢字のようなものは、とても興味深いようだ。以前「奈々子さんのような名前の々は何ですか?」と聞かれ、繰り返しの記号のようなものだと説明したこともあった。
 携帯電話のメール作成の記号入力のところを見ると、「々」の隣りに「仝」という記号がある。これは「同」の古字だが、私は今まで1度も使用したことがない。若い人にその存在を聞いてみたところ、「あ〜、アノ顔文字にも使えないヤツね。」と言われ、何だか「仝」が不憫になってしまった。いつか約物としての使命を果たさせてやりたいと携帯のメールを打つたびに思っている。


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