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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第105回 子どもの母国語に関する一考察

しろやぎ

 もう10年ほども前になるだろうか。それはとても不思議な感覚だった。
 その日私は中学3年生の日本人の男の子とそのお母さんと話をしていた。
 彼はお父さんの転勤で小学校時代のほとんどをドイツで過ごし、その後シンガポールの日本人学校の中学へ進学し、高校はシンガポールのインターナショナル校に進むという。
 「もっとお茶をいかが?」と聞くと 「はい、もう一杯いただきます。」と答える。
 「学校はどう?好きな科目は?」の問いには、「忙しいけれど、友達と遊ぶのが楽しい、理系の科目が好きです。日本に戻ったら剣道をやってみたい・・・」
 そして、『将来こんなことをしたい、それは今の日本はこうだと思うから・・』と話が込み入って複雑になると、彼は突然英語で話し出した。
 そのあと、日常の会話は日本語、考えや思いは英語、時々傍らの母親にドイツ語で何か言う・・という不思議でめまぐるしい時間が流れた。
 生まれて始めて身近に話しをしたバイリンガル少年!? 当時、息子の英語教育に燃えていた私は目を丸くしたものだった。しかし彼のお母さんは、どの言語も中途半端、とため息をついた。へぇ、そんなものかな、とひたすらヨダレを抑える私であった。

 今年の春、関東地方の県で、英語で教科を教える小学校が誕生した。
 入学式に英語で抱負を述べる6歳の子ども達をテレビで見て、英語のお稽古に挫折した10歳の息子は「すっげ〜」といたく感動していた。  小学校で英語の授業が正規に導入されることも決まり、英語塾や○×メソッドも益々花盛りの今日この頃、又親の海外転勤、国際結婚と、国境線はどんどんその影が薄くなる。
 日本の子ども達がしっかりとした母国語と母文化の礎の上に、様々な文化や言語を幅広く身につけて、月並みだが幅広い視野を持った大人になってくれるといいと思う。
 又、縁あって日本に暮らす、日本語以外の母国語を持つ子ども達も、母国語と母文化を忘れることなく、更に美しい日本語を身につけて欲しいと日々願っている。



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