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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第99回 日本語の造語力

八木静子

 最近、一日の大半を高校生と一緒に過ごしています。いつも彼らとの会話を楽しんでいるのですが、時々、日本語の使い方で、おやっと思うことがあります。
 「このペン貸してくれますか」
 「全然、いいです」
 この会話を聞いて皆さんはどう思われますか。「全然」は、後ろに否定の語句を伴うのが普通の使い方です。しかし昨今さまざまな場面で、否定の語句を伴はない「全然」を耳にします。なんとなく違和感を覚えますが、私自身も使っていることに気づきました。そこで「全然」を辞書で調べてみると、3つの意味があることが分かります。
1 「全く」 「ことごとく」 「すっかり」 ※後ろに否定の文章が来る
2 「全く」 「本当に」 「実際に」
3 「まったくす」(「完全にする」)
 2と3の意味では、必ずしも後ろに否定の文章を伴はなくてもよいことになります。“なるほど”。高校生の造語は慣用句としてはおかしいけれども、慣用そのものが世の中の流れと共に変わってくるのだと考えれば、まあまあということになるのでしょう。
 さて次の例はいかがでしょうか。
「先生、今日、ノートをほどこしてきたから、授業はバッチリです」
 これには本当にびっくりしました。よくよく聞いてみると、「ノートにマーカーをつけて、勉強をしてきた」という意味だそうです。
「施す」をこのような意味で使うという、この新鮮さ?!
「施す」を辞書で確認しました。
1 旗のなびく形容(風が上流から下流れる様)
2 上流の者が下流の者に物を与える。
の他に、
3 おこなう 例 施工<せこう> 施術<せじゅつ>
4 つける  例 施粉<せふん>(白粉をつけること。化粧すること)など
 4番目の意味だとすれば、「ノートにマーカーで線をつける(ひく)」ことは「ノートにほどこしをした」ということになるのでしょう。
 「喫茶店でお茶を飲む」ことを「お茶する」と表現したのは、やはり高校生ではなかったでしょうか。彼らの造語力は実にたいしたものです。慣用的にはおかしくとも、理由を聞けば、理解できます。言葉は、このように変化していくものなのでしょう。
 道を歩いているといろいろな外国語を耳にします。これらの言葉も日本語に影響を与え、今までとは全く違った日本語の使いかたなどが生まれるかもしれません。多文化社会の中で、日本語はどのように変化していくのでしょうか。私はワクワク、ドキドキしています。


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