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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第98回 「ブ」の言葉

e.e.

 最近の日本語はカタカナ語が氾濫していると言われる。カタカナ語の書き取りは中級レベルになっても外国人学生が苦労するものの一つである。私はカタカナ語の使用に関しては特に抵抗なく受け入れられるほうだったが、先日、違和感のあるカタカナ語に出会った。それは友人から届いた結婚式の招待状だった。
   と き:○月×日(土曜日)午前十一時
   ところ:総合結婚式場・ブケ東海○○1階スカーレット
 結婚式場の名前「ブケ」の意味が気になった。「ブ」という音が結婚式場という華やかな場にそぐわないような気がしたのだ。「ブ」がつく2文字の言葉で、3秒以内で思いついたのは「ブタ」「ブス」「ブー」・・・豚には失礼だが、あまり美しくない響きの言葉達である。後ろに東海という漢字があることから、実は「武家東海」で、門構えの立派な武家屋敷で式が行われるのかとも考えたが、その後に続く「スカーレット」という言葉が似つかわしくない。武家屋敷で「風とともに去りぬ」のようなドラマティックな演出を行う結婚式場なのかと勝手な想像は膨らんでいく。
 結局、この「ブケ」の意味はもちろん「武家」ではなく「ブーケ=花束」のことをフランス語の発音で「ブケ」と表記したものだということがわかった。確かに、bouquetをカタカナで書くと「ブケ」になるものの、フランス語をかじったことのある私でさえ、「ブケ=bouquet」であることが結びつかなかった。
 日本語とフランス語では音の響きが異なり、語感が全然違う。フランス語のbouquetは軽やかさと華やかさを連想させるが、カタカナ語の「ブケ」は重たさを感じさせる。カタカナ語の表記が、あるイメージや意味を持って認知されるには、まずカタカナ語が音で広く流布されていなければならないということだろう。花束という意味を伝えたいなら、ブーケと表記するほうが分かりやすい。なんでもカタカナ語にすればイメージがよくなるというものではないのだと思った。
 この結婚式場に集うほとんどの人は特に「ブケ」という言葉を気にも留めないだろう。しかし、その為に無意識に「武家」をイメージして捉えているとしたら、結婚式場のイメージを損ねているに違いない。個人的には「スカーレット東海」という名前がいいと思うのだが。


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