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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第86回 時代劇テレビドラマの台詞

浮田 博良

時代劇というと、テレビドラマ以外に映画があるが、ここ10年以上時代劇の映画を見たことがないので、テレビドラマについて述べる。
時代劇テレビドラマといえば、NHKの毎週日曜日午後8時からの「大河ドラマ」が1年間にわたる長編番組として続いている。今年は「義経」が始まったところだ。
昨年は「新撰組」、一昨年は「宮本武蔵」、その前は「利家とまつ」、かなり以前1990年「翔ぶが如く」(西郷隆盛)などに対し、時代は、ずっと遡って、1159年平治の乱から始まった。やがて頼朝が挙兵、馳せ参じた義経による追討で、平家が壇ノ浦で滅亡した後、こんどは兄頼朝に追われることになった義経が、奥州平泉で最期を遂げるまでの話だが、時代劇は必ずしも史実通りではなく、何らかの文学作品に基づいてドラマの脚本が書かれている。
ここでは、それらのドラマの中で、どのような日本語が使われているのかを考察してみたい。
言葉というものは、時代と共に変化するもので、1868年の明治政府発足以来137年経った現在までを考えてもその変遷は大きい。
昨年の「新撰組」では、近藤勇ほか隊士は、出身は東京近郊の出身だが、現代東京語で話していた。「宮本武蔵」は、おそらく吉川英治による小説が基になっているのであろう。「翔ぶが如く」西郷隆盛役の西田敏行は、特訓で覚えた鹿児島方言で隆盛の人柄をよく表わしていた。今年の「義経」では、今の舞台となっている京都方言ではなく、時代劇用共通語といえるだろうか。放送やテレビのなかったその時代は、地方別の方言は今よりもっと変化に富んでいた筈で、少年から青年期を伊豆で過ごした頼朝や、奥州で過ごした義経は、実際にはどんな話しぶりだったのだろう。今回のドラマの種本となった「義経記」という伝承物語があり、その現代語版といえる似た名称の本が最近数多く出版されているが、このドラマへの関心の大きさを示しているのだろう。
ここで、当時の言葉を知る上で参考になるのは、岩波文庫「古代国語の音韻に就いて」橋本進吉著(1980年6月発行)がある。文庫本とはいえ、非常に高度の専門的な内容なので難解だが、奈良時代にまで遡って音韻の変化を分析しているので、現代語まで、大きな変化があったことが分かる。
差異が大きいということは、たとえ当時の言葉に近い脚本が書けたとしても、今のテレビ視聴者には分からないのだから、「その時代の言葉らしい」という話し方にしてあるのだろう。これから一年、物語の筋を追うと同時に、台詞の言語的分析も楽しみたいと思う。終りは兄頼朝勢に追われて奥州へと逃げ延びる途中、安宅の関での問答は、能や歌舞伎「勧進帳」でも名場面になっているが、このドラマではどんな掛け合いが聞けるだろうか。


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