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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第85回 がんばる

ichi

日常何の気なしによく口にする言葉に「がんばる」がある。ほんの挨拶程度の軽い気持ちから、深く傷ついた相手に対する勇気付けの励ましの言葉まで幅広く使われている。
相手が全力を挙げて努力しているときに「がんばって」は何か白々しく感じるので、私自身はなるべく使わないようにしているが、つい無意識に口をついて出てしまうから不思議な言葉である。
どうも英語ではぴったりな訳語は無いらしい。欧米人にはこの言葉のニュアンスは分りづらいだろう。言葉自体は古くからあったらしいが、明治政府が「富国強兵」をスローガンにした頃からはやりだし、定着してしまったと分析した学者もいた。

しばらく前、東京の友人と一杯やった帰りの電車の中で、途中から乗ってきて私の隣に腰掛けたのが、北朝鮮拉致問題家族会の横田さんだった。奥様は離れて対面にお座りになっておられた。講演会か何かからのお帰りの途中とお見受けした。
同世代の親として、娘を拉致された横田夫妻の心痛を思うと同情の念を禁じえない。政府も動いてくれない中で永年解決に努力されてきたことは敬服する。何とか勇気付けてあげたい気持ちで一杯である。

二三言葉を交わした後で、横田さんは電車をおりる準備を始められた。さて何て声をかけてあげたらいいものか。「がんばってください」が最も日本的な表現だと思ったが何となく空々しい響きがする。
私は「いい方向で早く解決するといいですね。」と伝えたように記憶している。あとで自分の言った言葉の響きが頭の中に残って、どうしてもっと自分の心を伝える表現が出来なかったのかと思った。やはりあの場合は「がんばってください」が最もぴったりした日本語表現だったのだろうか。

あれから一年以上たった今も問題は解決してない。ますます複雑になってきた感もある。
早期解決を心から願うところです。
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