第78回 漢字の学習
日本語を学習していくうえで、漢字の存在は無視できない。
日本で進学や何らかの試験を受けることを考えている人には,しっかりした漢字学習が必要不可欠である。また試験は関係ない人でも、どのような形にしろ漢字を勉強したほうが良い。日本に居る限り、何を見ても何所へ行っても漢字が目に入ってくる。会話に不自由しない人でも,漢字が少しでも分かれば,生活に広がりが出て、もっと有意義に楽しく過ごせるはずだから。
漢字の学習について私の経験から考えてみたい。
(今回は初級、初中級のレベルの学習者に絞っている)
「日本語を勉強したい」という初級レベルの人には、ひらがなカタカナの定着が感じられたら、メインテキストと平行して漢字の学習も少しずつでも進めていったほうが良いようだ。漢字テキストを決めてそれに沿って勉強しても、もちろんいい。でも初めは形式張らず、メインテキストに何度も出てくる漢字をルビを外して読んでみてもいいし、生活上よく目にする漢字(駅、入口、切符、横浜、東京etc)を読んで覚えることでもいいと思う。
その時点で大切なことは、正しく読むこと、その正しい読み方が書けることである。特にふりがなを書かせ、促音、拗音、濁点等の使い方を注意深く見る。初めが肝心なのである。
そこがしっかり出来ていると、日本語能力試験3、4級の漢字に関する問題はそう難しくない。10分前後の時間をとって、それを続けていきたい。
ここ地球学校では一週間のレッスン時間が2〜4時間ぐらいの人が多いようだ。
そんな中で漢字に時間を割くのは勇気の要ることである。が、初級から総合的に学んでいくことが大切である。
と言う私も、たかが10分されど10分 である。この短い時間では非漢字圏の学習者に漢字を書くことまでは指導できず、ここでは読むことに徹している。
幸い漢字の時間が皆好きである。漢字圏の学習者、中国の人にとっては日々使っている漢字が、まったく違う読み方や意味だったり、また同じものもあったりで、少々クイズ的な楽しみもあるようだし、また受験的勉強をしてきている韓国の人にとっては、漢字は征服すべきもの、学力アップの道といった感じで、常に手を動かし反故紙を真っ黒にして挑戦している。一方非漢字圏の学習者にとって、漢字は未知なもの、最高に東洋的エキゾチックなものと感じており、そのものにだれもが触れてみたいと思っている。
ゆえに漢字に対してほとんど皆が前向きであり、レッスンはそれなりに楽しいのである。
次に指導提出した漢字をどのように定着させていくか。
ここからが大きな問題となってくる。
漢字の勉強に関しては、「好き・楽しんで勉強できる」=「上達が早い・指導がし易い」ではない。「好きこそ物の上手なれ」は一概に通用しないと思ってよい。
漢字の効率良い定着には学習者の強い意思と、指導する側の多大なる忍耐、そして双方の弛みない努力が必要である。
だがこのような好条件が揃うことも、続くこともまれである。
毎日勉強がある日本語学校の学生や、目標とする受験が近づいている学生には、有無を言わせない詰め込みも必要であろう。しかしながら、仕事を持ち、1週間に1、2回レッスンの学習者に、他にいろいろ学習しなければならないものがあるうえに,定着のためといって漢字の自宅学習を強要するわけにはいかない。始めは意欲満満張り切っていても,疲れてくるものである。
そのあたりでの変化を感じ取れないで推し進めていると,漢字を勉強することが嫌になる。嫌になれば漢字学習を止めたくなる。止めてしまえばそれまでである。せっかく興味を持って始めたことなのだから,細くてよいから続けて欲しい。
「好きこそ継続への道」と考えている。
継続へ向かわせるには、「漢字の勉強は楽しくて好き」という気持ちを大切に受け止め、その気持ちが持続するように、指導する側の努力が必要である。
過度の負担をかけない。やる気を出させる心地よい負担をかけることも必要。教えた漢字は後日必ず定着度をチェックする。チェックに向けて学習者にも自習させる。チェックしたものは必ず学習者と一緒に見直す。間違えたり分からなかった箇所を、すぐに訂正したり言ったりせず、もう一度ヒントを与えるなどして考えてもらう。良く出来た時は誉め、勉強してこなかったり、出来が悪い時でも注意して叱らず、激励。
「大丈夫。2回3回違っても、5回間違えれば6回目は必ず覚えるから、、、、」と。
このような事事が私の漢字学習指導のうえでの留意点のような気がする。
激昂して口から飛び出た言葉は、相手を深く傷つけ、取り返しのつかないこともある。
「飴と鞭と忍耐」である。
漢字の学習は個人差が大きい。
どの学習者も他の学生に引きずられることなく自分のペースで進んでいって欲しい。
そしてどんどん目に入る漢字を読んでみるといい。電車の中吊り広告、街の看板、スーパーの陳列棚の上にある食品分類を書いたカード等、生教材はごろごろしている。
そんな漢字に興味を持つか持たないかが、ステップアップへの分かれ道かもしれない。
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