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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第77回 裏面メッセージについて


山瀬

 いきなり、心理学の話で申し訳ないのですが、日本語教育は心理学界から大きく影響を受けてきているので、今しばらく、お耳を傾けて下さい。認知心理学が主流となった後、1990年代に分派として「交流分析」をキーワードに研究を始めたクループがあります。コミュニケーションがうまくいかずに終わる時、それは何が原因だったのかを徹底的に分析していきました。【TA(Transactional Analysis)と言います。今回の主眼ではではないので詳しい説明はしません。興味のある方は本をお貸しします。】一般的に交流の場では言葉によるコミュニケーションは35%であり、言語外のコミュニケーションが65%といわれておりますが、我々が人間関係に悩むのもこの65%故といっても過言ではありません。身振り、手振り、顔の表情、声の大きさ、などなど----。TAのグループは表面の言葉の意味(文法通りの意味)ではなく、裏面にあるメッセージをキャッチできなかった時にノイズや混乱が生じ、コミュニケーションが成立しなくなる、あるいはギスギスすると考え、分析を進めました。
 例えば、「バーゲンセールは今日で終わりです」という短い文の中には単純に事実だけではなく、「今買わないと損ですよ」メッセージが含まれことが多いわけで、損であると認知した人はそのメッセージを受けたからこそ商品を買うわけです。
 日本語教育の現場に立った時、文法だけ教えていて事足れりではないとこの頃強く思います。大学進学の為の読み書き中心の教育ではなく、コミュニケーション主体の教育に変わろうとする時、やはりこの裏面のメッセージの機能を考えたシラバスが必要ではないかと思っています。
 初級を終えた学習者のコミュニケーションの壁は難しい言い回しや難解な語彙を勉強することで解決できるのではなく、談話を続ける力を育てることにあるように思います。
今までの教科書のように文法的な正しさの枠の留まり、生き生きとした会話パターンではない会話のオウム返しの練習があまり役に立ってはいないのではないかと思いながらも、さりとて、私自身どのようなものが作れるのか、具体的なものが今、あるわけではないのです。学習者がどんな時に困ったり、誤解したり、理解不能になりやすいのか学習者たちから学びながら、思いついたことなどをこれから、メモしながら、溜め込んで行きたいと考えています。
 先日もやはり、学習者からの質問で「はっ」とさせられたことがあるのです。無意識に使い分けている言葉の本当の意味に「なるほどなるほど」と勉強になります。地球学校のプライベートのレッスンならではのことです。「ダメにする」というフレーズが出てきたときに「先生、『ダメになる』とは何が違うのか」と聞かれました。する動詞、なる動詞のなどの文法的な話も必要ですし、自動詞他動詞表現も含めて指導することもちろん必要なことです。
でも考えてみると、「アレ、だめにしちゃった」と言う時は物や事がダメだということと同時に失敗に対する後悔の気持ちや自分の責任などの気持ちを伝えています。でも「アレ、ダメになっちゃった」と言う時は物や事がダメだということと同時に私には責任はないということを伝えています。
 また、「時間があれば行きます」の言葉なども、裏面のメッセージは「時間がないので行けません」のことが多いのではないでしょか。
「〜するつもりです」も欧米系の学習者に「will」で取らえられると誤解が生じそうですね。
中国の人の助詞の省略も問題になりそうです。「上司と相談する」?「上司に相談する」?
これらもシビアな問題になりそうです。内では「〜に」のほうがいいけど外の人に「〜に」じゃ頼りない人と思われるんではないでしょうか?
言葉の単文の意味だけではコミュニケーションが成立しないことを考えなければいけないと思います。談話を進めるテクニックなども含めてその談話の中で何を達成したいのか【依頼、断り、態度の表明、謝り、許可を求めるなどなど--】を意識した会話の訓練など「できるだけ」考えてみたいです。ああああ---でも時間がないので「できたら」ね、で今日は終わりにします。

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