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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第75回 二人組、ににんぐみ?、ふたりぐみ?


井嶋 勗

皆さん、「二人組」を、なんと言っていますか。 私は、普通の会話では「ふたりぐみ」と言っています。と言い出したのは、最近、NHKのニュースで「ににんぐみの男が…」と言うのを聞くたびに、奇異に感じるからです。
数年前から統一したのか、「ふたりぐみ」は聞かれなくなりました。皆さんは、なんとも感じませんか。
広辞苑で調べてみましたが、『ににん』も『ふたり』も、見出し語として出ていますが、用例としては、「二人組」は出ていません。従ってどちらの読みが正しいのか、引分けです。
『ににん』の用例としては、「二人三脚」、「二人称」(ちょっと本題外かな、に-にんしょうだから)、「二人張」(二人でしか弦が張れないような強弓)、「二人道成寺」(歌舞伎舞踊の一)、「二人椀久」(同)「二人比丘尼」(仮名草子の一)などが出ています。
『ふたり』のほうは、「二人」、「二人使」(死亡の通知には二人が一組になって行く)、「二人静」(能の一)、「二人大名」(狂言の一)、「二人袴」(同)などが見られます。

一方、漢字字典によると、「ニ」の訓は「ふた」で、『ふたり』もそうです。『ににん』は、音です。特に、「人、にん」は呉音で、古くから呉の国との自然発生的な交易を通じて浸透していった中国文字と読みで、漢音(「人、じん」)が飛鳥・平安時代に遣隋使を通じて、国家の学問・仏教の基礎として導入されたという歴史的背景から見てみるとどうでしょう。「二人使」は倭語として存在していた言葉で、訓読みが取られ、「二人張」は職人用語として、「二人三脚」は多くの四字熟語と同様、或は、日本での造語臭いので四字熟語の読みに倣って、呉音読みが取られたものと思われます。しかし、能、狂言に関しては、武士階級の庇護の下に鎌倉時代以降発達した芸能で、中国文字を専らにした彼等ではありながら、カウンティングとしての地位を確保していた訓読みを取ったとして不思議ではないでしょう。或は、日本独自の芸能を強く意識して、訓読みを取ったのかも知れません。逆に、歌舞伎、仮名草子の『ににん』に関しては、支配階級の芸能である能、狂言の『ふたり』に対抗して、大衆芸能、大衆文芸を意識してわざと『ににん』と違う呼び方をしたのではないかと考えられます。

少し脱線しましたが、他に、研究社の英和中辞典に、見出し語として『ににん』が出ています。同項に『ふたり』とも、と付記されていますが、見出し語としては出ていません。用例として、「二人組、ににんぐみ、a pair of 」と「二人前、ににんまえ」が出ており、これが辞書上に現れる、NHK用法の唯一のサポーターです。でも、でも、
タンデムは「ふたり」乗自転車だし、スナイプ又は470は「ふたり」乗競技用小艇だし、仲良し二人組は、多くの人が「ふたりぐみ」と言っているようです。

結局のところ、どちらかに軍配を挙げるわけには行かなそうです。大雑把に言えば、或は、私の感覚と独断で言えば、日常的にくだけて使うのが『ふたり』、少し肩肘を張って使うのが『ににん』と言ったところでしょうか。NHKに根拠を問い合わせるのが早道と思いながら、原稿の締切日がやって来ました。

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