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コラム ふしぎ日本語 - バックナンバー  

第50回 日本語らしい発音とは…


角川

日本に来る外国人は、母国でも日本語を勉強していた人が多い。そんな人々は、よくこう言う。

「上手に話せるようになりたいです」 「せっかく日本に来て勉強するんだから、発音が上手になりたいです」

非常に気持ちがよくわかる。文法や読解の勉強は母国でもできるからだ。試験勉強ではない、生きた日本語を身につけたいと考えるのは当然のことだろう。今回は今までの経験から考えた日本語の発音についてまとめてみたい。

1 音の長さ
日本語らしい発音って、何だろう。同じ日本語でも、地方によってアクセントも違うし、江戸っ子のように「ひ」「し」の区別がつかないという単音レベルの問題だってある。どれが正しいというわけでもない。でも、全て日本語らしくは聞こえるのは、何でだろう。それは「音の長さ」といえるのではないか。例えば、長音・促音・撥音などである。長音とは「おとうさん」の「う」、「おかあさん」の「あ」、「おねえさん」の「え」のようなもの。促音とは「やっぱり」の「っ」などの小さい「つ」の音。撥音は「せんせい」の「ん」のこと。他にも、英語でいうと「k」で終わる音などは子音の音しか読まないが、日本語は全て母音をくっつけるので「KU」と「う」の口をする必要があるが、これも音の長さと関係してくる。中国の人も韓国の人もアメリカの人も他の国の人も、ほぼ共通の日本語学習時の発音の問題点なので、同じ教室で行うことができて好都合でもある。

少し前から「音読」が話題になっているが、これは日本語学習でも有効である。音読の練習を行うとき、漢字にルビをつけたものを配布し、例えば「小さい“つ”だけを探してください」と指示し赤で○をつけてもらう。そうすると、視覚的にも意識しながら音読できる。同じように、長音や撥音も行い、通常よりも我慢して長く読むように促すと良い練習になる。何かで読んだところによると、日本人の音の長さが1秒だとすると、中国人は0.6秒だとか。実際に困った例を聞いたこともある。ある学習者が中華料理店でアルバイトをしていた。その店は一階と二階に分かれており、トイレは一階にある。客に「トイレはどこ?」と聞かれることが多いので、本人は「一階です」と答えるのだが、多くの客が二階に上がってしまって困る、と嘆いていた。おそらくこれは音の長さの問題だろう。その人は「いっかい」ではなく「いかい」と発音する。そうすると、アクセントだけでなく、母音の「い」も「二階(にかい)」と同じイ段なので、日本人の客の耳には「いっかい」ではなく「にかい」と聞こえてしまうのである。その学習者に「長いかなあ、と思うぐらい小さい“つ”を長く言ってみるといいよ」というと、客に間違われなくなったと喜ばれた。最初は1.5秒や2秒ぐらいと、長すぎてもいい。体で長さを覚えるぐらい意識して言うことが重要なようだ。

2 清濁
日本語の発音で、もう一つ困るのは清濁、つまり点々の問題。「退学」と「大学」では大違い。韓国人が「韓国(かんこく)から来ました」というと日本人には「監獄(かんごく)から来ました」と聞こえるというのは、よく聞く話である。この問題は、まずは表記から正確に覚えることが重要だと明言できる。日本人が英語学習のとき困る発音に「L」「R」の問題があるが、これも同じことだろう。スペルがどっちなのかを明確に理解していなければ、いくら発音に自信があっても間違えてしまうのだから。

ある韓国人の女性の話だが、日本人の男性と結婚し、小学生の子どもが一人いる。家で“しりとり”をするのだが、点々についてはその人だけ免除してもらえるという。例えば、子どもが「ねこ」と言った後に、お母さんが「ごま」と言っても許してもらえるルールで遊ぶのだそうだ。これは、駒(こま)だと思ったからではなく、胡麻(ごま)だとわかったうえで進むのである。このように許してもらってしまうようになったら、その人はきっと濁音の問題について正確に発音しようとは思わないだろう。本人がそれで満足しているのなら、仕方がないことだが…。

清濁が上手だと感じた学習者に、ポイントを聞いたことがある。一人は「やはり表記を完璧に覚えることが一番です」と答えた。この人は言われなければわからないぐらい、発音も文法も表現も上手だった。もう一人は「濁音は鼻濁音ぎみに、少し鼻にかけて出すといいようだ」と答えた。これも経験から得た学習者の貴重な意見である。もちろん、清濁の問題は語頭なのか語中なのか語末なのかでも異なる問題があるので、一概には言えないが、何でもやってみることが重要だろう。

他にもあるが、今回はこのぐらいにして、また改めて発音について考えてみたい。他の先生方も、ご経験から得たエピソードなどを教えてもらえれば嬉しいかぎりである。

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